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FAQ(よくある質問)

 

Q.生命保険からの債権回収は?

保険金からの債権回収について取り上げます。

保険金請求権が担保の対象になること、そのための保険法上の規定、保険会社への通知義務、そして被保険者の同意が必要なケースについて論じます。そこからさらに、質権の実行手続き、保険金の差押え、債権者による保険解約、契約者の介入権、そして保険契約者および保険金受取人の破産時の扱いに関する法的側面も掘り下げています。

この記事は、

  • 保険からの債権回収をする人
  • 自己破産で保険がある人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.12.11

 

保険金請求権の担保設定とは?

保険金請求権は財産権となるので、これを担保に入れるということも考えられます。

債権を担保に入れる方法としは質権になります。

保険金請求権に質権を設定するという方法です。

 

質権の設定に関し、保険法47条は、保険金請求権に質権を設定できることを認めています。
質権を設定するには、保険会社に通知する必要があります。
さらに、保険契約者と被保険者が別人の場合、被保険者の同意が必要です。

実務上は、保険会社は「質権設定承認請求書兼質権設定契約書」という書式が使われます。この書式を使用して、保険金請求権に質権を設定する手続きが行われます。被保険者の同意もこの書面で確認するのが通常です。

なお、未払いの保険料があると、支払う保険金から差し引かれます。

保険契約者は、質権を設定すると、その後、保険契約の内容を変更できなくなります。担保に入れているので、その対象物を質権者に無断で変更はできなくなるわけです。

 

保険契約者による質権設定の問題

保険の質権設定については、保険契約者と保険金受取人とが別人の場合、保険金受取人の同意がないのに保険契約者が
質権を設定できるかという点が問題になります。

同意なく契約者が質権の対象にできてしまうのかという問題です。この点については、考え方が分かれています。

保険金請求権は受取人の権利です。そのため、保険契約者には処分権がなく、質権設定もできないという考えがあります。

これに対し、保険契約者は保険金受取人を変更できる権利があるので、受取人の同意がなくても保険金請求権に質権を設定する権利もあるという考え方もあります。

裁判例でも判断が分かれています。判断が分かれている以上、質権設定をする場合には、受取人の同意を得ておかないと無効になるリスクを負うことになってしまいます。

 

保険に対する質権行使の手続

質権は担保権ですので、債権回収ができない場合には、担保権の実行をする必要があります。質権の実行は、どのように進めるのでしょうか。

質権者は、保険事故発生後に保険会社に直接保険金を請求することになります。保険金請求書のほか、質権設定契約書等の必要書類を提出します。

しかし、実際には、この手続きには、保険契約者や被保険者の協力が必要です。保険事故発生後、通常は、保険会社の調査が入りますが、質権者だけでは、これに対応できません。

質権設定とともに、協力義務などを課す契約にしておくか、保険金の請求により債務が減るメリットを伝えることによって契約者等を動かす必要があるでしょう。

 

保険金の差押え

生命保険も財産権の一つですので、保険金受取人の債権者は、保険事故後に保険金請求権を差し押さえることができます。

保険事故発生前の請求権自体も、理論上は、停止条件付きの債権の差押えとして可能とされています。

保険金を差し押さえた債権者は、事故発生後に、直接、保険会社から保険金を取り立てることができます。質権の場合と同様です。

 

債権者による保険解約

保険の内容によっては積立部分があり、解約すると解約返戻金があることも多いです。

長期間の保険だと、解約返戻金が高額になっていることもあります。

このような場合、保険契約者の債権者からすると、解約返戻金請求権から回収したいと考えます。

判例は、生命保険契約の解約返戻金請求権は、「保険契約者が解約権を行使することを条件として効力を生ずる権利」とし、債権者が取立てのために保険を解約できるとしています。

保険契約者の債権者は、解約返戻金請求権を差し押さえることで、保険契約を解約し、保険会社から解約返戻金請求権を取り立てることができるのです。

 

契約者による介入権

未払いの債務があるからといって、自身の保険を債権者に解約されてしまうと困るという意見もあるでしょう。

そこで、債権者による保険契約の解約に対し、契約者には介入権という制度があります。

保険法で決められているルールです。債権者による差押えのほか、破産手続きでの破産管財人による解約でも適用されます。

これは、保険契約者以外の第三者が契約を解除した場合、解除の効力発生を1か月遅らせ、その間に受取人が差押債権者等に対して解約返戻金相当額を支払えば、解除を阻止できるという制度です。

お金を払って保険契約を維持する仕組みです。

年齢や健康状態によっては、保険に再加入できないこともあり、従前の保険を維持したいという場合に使われる制度です。

この介入権は、家族や被保険者の保護を図る趣旨ですので、受取人が、保険契約者又は被保険者の親族ないし被保険者本人の場合にだけ使える制度です。

 

介入期間中の保険事故

介入権の行使のため、解除を1ヶ月遅らせている期間に保険事故が発生することもありえます。

保険事故が発生すると保険金請求権が発生し、解約返戻金がなくなるように考えられます。

しかし、これでは、解約返戻金を差押えた債権者の利益を害します。

このような場合のルールとして、保険法は、1ヶ月の間に保険事故が発生した場合、保険会社は、保険金のなかから解約返戻金相当額を差押債権者に支払い、残金を保険金受取人に支払うものとしています。

 

具体例として、Aさん(保険契約者)がB社(保険会社)と生命保険の契約を結んでいる場面を考えてみましょう。

C社(債権者)はAさんに対する未払い債権回収のため、Aさんの解約返戻金請求権を差し押さえ解約。

その後、介入権の期間中にAさんが事故に遭い、保険事故が発生。

この場合、B社はC社に解約返戻金相当額の保険金を支払わなければならないのです。その後に残金を受取人に支払うことになります。

 

保険契約者の破産

保険契約者が自己破産した場合、保険の解約返戻金は財産とされ、破産財団に組み入れられます。

破産管財人が選任される事件では、破産管財人が保険を解約し、解約返戻金を回収、債権者に分配など進めます。

もっとも解約返戻金額が低い保険の場合には、解約まで進めずに自由財産拡張の取り扱いをすることも多いです。

神奈川県内では、一応、保険解約返戻金が20万円を上回るかどうかが破産管財人をつけるかどうかの基準になっています。また、破産管財人がついた場合には、すべての財産で99万円が一つの基準になってきます。

 

破産管財人の解約と介入権

破産管財人が保険契約を解除した場合には、上記のように、介入権が使われることがあります。

1ヶ月の間に、保険金受取人が解約返戻金相当額を破産管財人に支払い、保険を維持する権利です。

ただ、実務上は、このような介入権を使い、解約返戻金額を破産管財人に支払えるのであれば、破産管財人の解約前に申し出をするなどして、同額を任意に破産財団に組み入れ、保険を破産財団から放棄してもらう方法が使われます。この場合には、保険会社に連絡も行かないので、手続きが煩雑にならずに済みます。

 

 

保険金受取人の自己破産

保険契約者と保険金受取人が別人の契約である場合などで、保険金受取人が自己破産した場合に、保険金請求権が破産財団を構成するかどうかが問題になることがあります。

契約者が自己破産をした場合には、上記のとおり解約返戻金の処理が問題になります。受取人の場合には、保険金の請求権の問題です。

保険金受取人が破産した場合、その保険金請求権が破産財団に帰属するか否かはタイミングが重要な問題です。

・破産手続開始前に保険事故が発生:この場合、保険金請求権は破産財団に帰属します。こちらについては法的に争いがありません。

・破産手続開始後に保険事故が発生:以前の判例では争いがありましたが、最高裁判所の平成28年4月28日の判決により、これも破産財団に帰属すると明確にされました。

基準時である破産手続開始決定時点で、保険事故が発生していないので、保険金請求権が破産財団を構成するのか疑問がありました。最高裁は、「破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は、破産法34条2項にいう『破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権』に該当する」ことを理由に、破産財団になると判断しています。

・破産手続終了後に保険事故が発生:この場合、保険金請求権は破産財団には帰属せず、自由財産とされています。

・破産手続終了までに保険事故が発生しない場合、そもそも保険金請求権は発生していないものと思われます。理論的には、破産管財人は、保険金請求権が換価価値を持たないと判断し、破産財団から放棄するという結論になりそうですが、そもそも契約者ではない破産者が保険事故も発生していない場合、未発生の保険金請求権を破産財団として申告しないことがほとんどと思われ、実務上は、放棄すらもされていない事件が多いでしょう。

 

保険と自己破産で問題になることも多いので、整理しておきましょう。

 

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