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FAQ(よくある質問)

 

Q.同居なし結婚でも婚姻費用は発生する?

結婚後、一度も同居していない夫婦でも婚姻費用を支払わないとだめだとした裁判例があります。

東京高等裁判所令和4年10月13日決定です。

 

この記事は、

  • 婚姻費用の請求をされた人
  • 同居ない結婚に疑問を持っている人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.8.25

 

同居なしの婚姻費用事案

妻(婚姻時37歳)と夫(婚姻時41歳)は、令和2年8月13日に婚姻届出を行いました。

しかし、同居せずに週末に会う関係が続いた後、同年10月12日に妻が同居を拒否。

妻は夫に対し「別居している配偶者にも生活費を渡す義務があるよ。毎月お願いします。」とのメールを送信して生活費の支払を要求する一方で、別居したまま会わなくなったという状態。

妻は、別居理由について、夫が浮気を疑うような発言を繰り返し、携帯電話から男性の電話番号の登録を抹消するよう要求したことから支配欲を感じたこと、結婚後は家事を完璧にこなすよう言いつけたことから、行政書士として働き続ける意向の自身とは夫婦観、人生観に基本的な相違があることを挙げていました。

令和3年4月14日、婚姻費用分担請求調停を申し立てた。同調停は、令和4年3月22日、不成立となり、審判手続に移行。

妻が夫に対して婚姻費用分担金の支払いを求める事案で、夫が争ったという事件です。

 

別居婚姻費用

家庭裁判所の判断

家庭裁判所の審判では、婚姻費用分担義務について、夫婦が同居して共同生活を営むことで成立する相互的な協力扶助関係があるとしました。夫婦が一旦同居生活を始めた場合、別居が始まっても、育児の分担関係が残っていれば、同居中の生活保持義務も継続するとされました。

しかし、家庭裁判所は、2人の婚姻が時期尚早で、夫婦共同生活を想定することが現実的ではないとし、夫に婚姻費用分担金の支払い義務を認めませんでした。

 

高等裁判所の判断

これに対し、高等裁判所の決定では、夫婦は婚姻関係に基づき互いに協力し扶助する義務を負い、婚姻から生ずる費用を分担する義務があるとされました。

この義務は法律関係から生じるもので、夫婦の同居や協力関係の存在から生じるものではないとされました。

そして、婚姻関係が現時点で破綻しているとしても、その原因が専ら妻にあると認めるに足りる的確な資料はないとし、婚姻費用分担義務を認めました。


夫婦は、婚姻関係に基づき互いに協力し扶助する義務を負い(民法752条)、婚姻から生ずる費用を分担する(民法760条)。この義務は、夫婦の他方に自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務であり、夫婦が別居している場合でも異なるものではないと指摘。

相手方は、抗告人と一度も同居したことがなく、婚姻後は数えるほどしか直接に会ったことがなく、健全な婚姻生活を送っていたとはいえないところ、その原因は、抗告人に相手方との同居又は健全な婚姻生活を送る意思がなく、相手方との同居を拒んでいるためであるとして、婚姻費用分担義務を負わないと主張。

しかし、当時37歳であった抗告人と当時41歳であった相手方は、互いに婚姻の意思をもって婚姻の届出をし、届出後直ちに同居したわけではないものの、互いに連絡を密に取りながら披露宴や同居生活に向けた準備を着々と進め、勤務先の関係者にも結婚する旨を報告して祝福を受けるなどしつつ、週末婚あるいは新婚旅行と称して、毎週末ごとに必ず、生活を共にしていたことと指摘。

抗告人と相手方の婚姻関係の実態がおよそ存在しなかったということはできず、婚姻関係を形成する意思がなかったということもできないと言及。

そして、婚姻費用分担義務は、前述したように婚姻という法律関係から生じるものであって、夫婦の同居や協力関係の存在という事実状態から生じるものではないから、婚姻の届出後同居することもないままに婚姻関係を継続し、その後、仮に抗告人と相手方の婚姻関係が既に破綻していると評価されるような事実状態に至ったとしても、前記法律上の扶助義務が消滅するということはできないとしました。

もっとも、婚姻関係の破綻について専ら又は主として責任がある配偶者が婚姻費用の分担を求めることは信義則違反となり、その責任の程度に応じて、婚姻費用の分担請求が認められない場合や、婚姻費用の分担額が減額される場合があると解されるものの、本件においては、仮に、抗告人と相手方の婚姻関係が既に破綻していると評価されるような事実状態にあるとしても、その原因が専ら又は主として抗告人にあると認めるに足りる的確な資料はないとしました。

結論として、未払い分の婚姻費用108万円と、毎月6万円を支払うよう命じています。

 

同居なし結婚の婚姻費用

夫婦は、法律に基づき、互いに協力し助け合う義務を持ちます。また、結婚に伴う費用は共同で負担するとされています(民法760条)。

このケースでは、原審判と本決定の間で、婚姻費用分担義務の有無について異なる結論が出されました

原審判は夫婦の同居や協力関係の実際の状況を重視しましたが、本決定では婚姻という法律関係から生じるものとして、婚姻費用分担義務を認めました。

原審判では、通常の夫婦の同居生活が始まった後のケースとは異なり、相手方に婚姻費用分担金の支払いを求める具体的な必要がないと判断しました。一方、本決定では、婚姻関係の実態が存在したとし、相手方の抗告人に対する婚姻費用分担義務を認めました。

婚姻費用分担義務については、夫婦間で自己と同程度の生活を保障する義務であり、法的な婚姻関係が継続している限り、民法760条の義務が生じるとされています。例外的に、婚姻関係の破綻に主な責任がある配偶者が婚姻費用の分担を求める場合、信義則違反となり、分担額が減額されることもあるとされています。

夫としては、一度も同居していない以上、婚姻関係の実態がないとして婚姻費用支払義務はないと主張したくもなるのですが、高裁の内容だと、同居していなくても婚姻費用の支払はしなければならないことになります。

夫が、法的に支払を拒絶するためには、妻が不当に同居を拒絶しているなど有責性の主張・立証まで必要だといえるでしょう。

家裁と高裁で判断が分かれているため、他の裁判所でも異なる判断がされる可能性はあります。しかし、婚姻費用請求側からはこの裁判例が出される可能性が高いでしょうから、支払拒絶をする場合には、しっかりと対策をしておく必要があるでしょう。



 

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