不動産売買契約のクーリングオフ、解除、取消を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.不動産売買はクーリングオフできる?

不動産を購入したものの、契約を白紙に戻したい、クーリングオフしたいという問い合わせは結構あります。

しかし、クーリングオフは、法律で決められている要件があります。それを満たす内容なのかチェックが必要になります。

今回は、不動産売買契約のクーリングオフや解除、取消について解説します。

この記事は、

  • 不動産売買契約をクーリングオフしたい
  • 不動産売買契約を取り消したい

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.6.28

 

クーリングオフとは?

クーリングオフとは、消費者が特定の契約を結んだ後、一定期間内であれば無条件でその契約を解除できる制度のことを指します。

この制度は、消費者が不利益な契約を避けるための保護措置として設けられています。どのような契約でも認められるわけではなく、法律で決められた一定の契約や契約方法の場合に使える制度です。

クーリングオフを認めた法律には、特定商取引法などがあり、この法律では訪問販売などでクーリングオフを認めています。

クーリングオフは、消費者に冷静になる期間を与える趣旨の制度です。

特に、不動産取引においては大きな金額が動くため、クーリングオフ制度の存在は消費者にとって重要な意味を持ちます。

 

不動産取引におけるクーリングオフの適用条件

不動産取引における契約解除の一つとして、宅地建物取引業法に基づくクーリングオフが存在します。不動産取引におけるクーリングオフは、特定の条件を満たす場合にのみ適用されます。

まず、売主が宅地建物取引業者である必要があります。宅地建物取引業者が自ら売主となっている宅地や建物の売買契約に限られます。すなわち、個人間取引ではクーリングオフはできません。

また、売主が宅地建物取引業者であっても、買主が宅地建物取引業者である場合、宅地建物取引業法は適用されません。買主は宅地建物取引業者でないことが必要です。業者間の取引であれば、冷静になるための消費者保護の期間は不要と考えられています。

さらに、契約の申込みや契約締結が宅地建物取引業者の事務所や案内所、住宅展示場など以外の場所で行われる必要があります。これらの場所で自ら契約を締結した場合、クーリングオフはできません。買主が自らその場所を指定した場合はクーリングオフが適用されません。

クーリングオフが可能な期間は、「クーリングオフができる旨およびその方法について書面を交付された日から8日間」です。この期間を過ぎると、クーリングオフはできません。一般的には契約から8日間と言われます。

最後に、不動産売買の決済前であることが必要です。決済まで進んでいるとクーリングオフはできません。

 

クーリングオフが可能な状況

以上の条件から、クーリングオフが可能な状況は限られます。

具体的には、宅地建物取引業者の免許を持つ者と売買契約を結び、その契約が宅地建物取引業者の事務所以外の場所で行われ、買主が自らその場所を指定していない場合です。また、契約締結後8日以内にクーリングオフの手続きを行うことが必要です。さらに、不動産の引渡しや売買代金の全額支払いが完了していないタイミングであることが必要です。

不動産契約

クーリングオフの手続きとその効果

クーリングオフの手続きは、買主が契約の解除の意思表示を記載した書面を発することで行われます。

この書面は、クーリングオフの意思表示を明確にするためのもので、その内容には法律で定められた事項が含まれます。クーリングオフが行われると、売買契約は白紙に戻ります

売主は受領した金銭を速やかに返還しなければなりません。また、クーリングオフにより売主が損害を被ったとしても、買主に対して損害賠償や違約金を請求することはできません

 

クーリングオフ後の対応と注意点

クーリングオフが行われた後、売主は受領した金銭があれば、速やかに返還する義務があります。

また、仲介業者がいる場合、クーリングオフを行った買主は仲介手数料の返還を請求することができるとされています。しかし、クーリングオフは一定の条件を満たした場合にのみ可能であり、その手続きは時間的な制約があるため、早急な対応が必要です。

また、クーリングオフが認められないと主張する不動産業者がいる場合、専門家の助けを借りて適切な対応をとることが重要です。

 

クーリングオフが使えない場合の対応

不動産売買契約におけるクーリングオフが適用されない場合でも、以下の手段を利用して契約を解除または取り消すことができる可能性があります。

売買契約を元に戻したい場合には検討してみると良いでしょう。

 

1. 手付解除

不動産売買契約を締結した際に、売主に対して「手付(手付金)」を支払った場合、買主は手付を放棄することで契約を解除することができます(民法第557条第1項)。ただし、契約で手付解除の期間が定められていたり、手付解除を認めない旨が定められていたり、売主が契約の履行に着手していた場合(例:注文住宅の建築工事開始など)は、手付解除が認められません。

手付金があるタイプの契約で、クーリングオフが認められない場合には、この手付解除を検討することになるでしょう。履行着手前という要件があり、この解釈が争われることも多いです。手付解除をするなら、履行着手される前に、早い段階で記録に残る形で解除通知を出しておく必要があります。

 

2. 債務不履行解除

売主が不動産売買契約上の義務に違反した場合、買主は債務不履行に基づき契約を解除することができます(民法第541条、第542条)。契約の一般原則による解除です。

また、不動産やその附属物について、種類・品質・数量に契約内容との不適合がある場合、買主は「契約不適合責任」に基づいて契約を解除することが可能です(民法第564条)。

ただし、債務不履行(契約不適合)の程度が契約および取引上の社会通念に照らして軽微な場合には、契約解除が認められない点に注意が必要です(民法第541条但書き)。

 

3. 消費者契約法に基づく契約取消し

買主が個人(事業者として契約を締結する場合を除く)であり、売主が事業者であるケースにおいては、売主に以下の行為が認められる場合、買主は不動産売買契約を取り消すことができる可能性があります。

消費者契約法は、消費者と事業者との取引で、消費者を保護する制度です。ただ、その要件には解釈の余地があるものも多く、クーリングオフよりも争われることが多いです。

契約の取消事由とされているのは次のような項目です。

- 重要事項の不実告知
- 不確実な事項に関する断定的判断の提供
- 不利益事実の不告知
- 消費者の要求に反する不退去
- 退去しようとする消費者の妨害

その他にも、改正によりデート商法や霊感商法も取消事由になっていますが、多く使われるのは上記の項目でしょう。

特に不動産売買契約では、「重要事実の不実告知」「不確実な事項に関する断定的判断の提供」「不利益事実の不告知」などが問題となりやすくなります。営業マンのセールストークが上記のいずれかに該当するのではないかと疑われる場合には、消費者契約法による取消の主張もしてみる価値があります。

 

錯誤・詐欺に基づく契約取消し

民法の規定に基づく契約の取消を主張する方法です。より漠然とした規定となっているため、消費者契約法による取消よりもさらに争われやすいです。

不動産売買契約に関する重要な勘違いがあった場合には「錯誤取消し」(民法第95条)、売主にだまされて不動産売買契約を締結した場合には「詐欺取消し」(民法第96条第1項)が認められる可能性があります。

錯誤取消しの要件としては、

・ 意思表示に対応する意思を欠いていたこと、または意思表示の動機に関する認識が真実に反しており、かつその動機を相手方に表示していたこと
・錯誤の内容が、法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであること

が必要とされます。

詐欺取消しの要件としては、

・相手方が欺罔行為をしたこと
・欺罔行為により、購入者が錯誤に陥ったこと
・ 錯誤に基づき、購入者が商品・サービスを購入したこと

が必要とされます。

 

売買解約交渉

買主によるクーリングオフや解除、取消が認められない場合には、法的には契約を白紙に戻せないことになります。

ただ、契約というのは、法的に効果を消せなくても、当事者間での合意があれば解約は可能です。

法的に権利主張が難しい場合には、解約交渉をして、合意解約を目指す方法もあります。合意ですので、相手の同意は必要になります。相手に何らかのメリットを提示できるのであれば、合意解約の交渉をしてみるのも一つの方法でしょう。

 

不動産売買クーリングオフの事例

クーリングオフが想定されている事例を紹介します。

ある日、東京都在住の田中さん(50歳、会社員)の勤務先に、大手不動産会社の営業マンが訪れました。営業マンは、田中さんに対して、都心から電車で30分の場所にある新築の一戸建てを売り込みました。その家は、駅から徒歩5分、近くにはスーパーマーケットや公園もあり、子育てにも適した環境だと説明されました。

営業マンの説明は非常に説得力があり、田中さんはその場で契約書にサインをしてしまいました。しかし、帰宅後、家族と話し合った結果、家のローンを抱えることのリスクや、現在住んでいる場所からの通勤時間の増加などを考えると、その家を購入することは適切ではないと判断しました。

田中さんは、契約から6日後のことでしたが、不動産会社に電話をして、クーリングオフを行いたいと伝えました。不動産会社の担当者は、田中さんがクーリングオフを行う権利があることを認め、田中さんにクーリングオフの手続きについて説明しました。

田中さんは、その後、内容証明郵便でクーリングオフの通知を不動産会社に送りました。通知によりクーリングオフは正式に行われ、田中さんは契約を無効にすることができました。そして、田中さんが支払った手付金は全額返還されました。

この事例では、田中さんがクーリングオフの権利を理解していたこと、そして、クーリングオフを行うための手続きを適切に行ったことが、無理な契約から逃れるための重要なポイントとなりました。

 

クーリングオフの方法

不動産売買契約のクーリングオフは期限が決まられています。

そのため、クーリングオフをする場合には、証拠に残る形でしておくようにしましょう。

内容証明郵便を利用するのが確実です。

また、他の解除や取消でも、文書での通知をしておいた方が主張が明確になるので、望ましいでしょう。内容証明郵便を利用しない場合には、自分用の控えを取っておくようにしておいてください。

 

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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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