養育費減額で差し押さえを避けるための強制執行停止の裁判例を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.養育費減額で差し押さえを避けるには?

一度決めた養育費を減額したい場合、当事者の間で話が決まらなければ調停や審判をすることになります。

その際、話が決まるまで支払いができず、最初の合意が公正証書や調停である場合には、差し押さえを回避するために強制執行停止の申立をしておく方が無難です。

この手続の可否について判断した裁判例がありますので紹介しておきます。

東京高等裁判所令和3年5月26日決定です。

この記事は、

  • 養育費を減額したい人
  • 養育費で差し押さえをされたくない人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.5.16

 

養育費減額の流れ

この事例では、公正証書に基づく養育費支払義務の減額を求める審判および調停を対象とし、その前段階の保全処分における保全の必要性について判断されています。

家庭裁判所は請求異議訴訟の提起に伴う強制執行の停止を求めることが可能であることを理由に保全の必要性がないと判断していました。

しかし、高等裁判所での決定は、養育費の増減に係る審判又は調停を本案とする強制執行を停止する旨の仮の地位を定める審判前の保全処分の方が望ましいとの判断がされています。

本件については、元妻が未払いの養育費があると主張し、強制執行手続へ移行すると通知しているため、元夫の急迫の危険を防止するため、強制執行を停止する必要性が認められる可能性を指摘しています。

 

養育費の変更

養育費については、元夫婦間での合意が、公正証書や調停などの債務名義になっていることも多いです。

債務名義は支払が遅れれば、差し押さえができる強い書類です。

養育費の変更については、民法880条により、その前提となった事情に変更があった場合には認められるとされています。

家事事件手続法における審判前の保全処分という制度があります。

婚姻費用などを調停の結果を待たずに保全処分の申立をして支払をさせるようなケースでよく使われます。

 

養育費の減額調停と強制執行停止

元夫は養育費を減額してもらいたいと考え、減額の申立をしました。

しかし、債務名義があるので、勝手に減額すると、差し押さえをされてしまいます。

そこで、審判前保全処分により、強制執行停止の申立もしたものです。

元夫が離婚した元妻に対して、離婚公正証書に定められた養育費支払義務の減額を求める審判および調停を対象とし、これに基づく強制執行の停止を求めた事案です。

家庭裁判所は、保全の必要性がないとして申立てを却下。元夫はこれを不服として抗告。

養育費減額

家庭裁判所の判断内容

元夫の申立てを却下しました。

元妻は、いまだ元夫の財産に対する強制執行を行っていないことが認められる上、そもそも、債務名義に基づく強制執行の停止を求める保全処分の申立ては、他に特別な救済方法がある場合には、保全の必要性を欠くため許されないものと解されるところ、元夫は、請求異議の訴えにおいて、元妻との間で養育費を減額する黙示の合意があった旨の実体上の事由を主張して、本件公正証書のうち養育費の支払を約した部分の執行力の排除を求めることができるのであるから、いずれにせよ、本件申立ては、保全の必要性を欠くものといわざるを得ないとしました。

請求異議訴訟でやりなさいという内容です。

 

 

高等裁判所の判断

高裁では、元夫の申立ては、保全の必要性があると判断しました。

養育費の支払に関して合意された公正証書に基づく強制執行について裁判所は、当該養育費に関する定めの変更を求める審判又は調停の申立てがあった場合において、利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があると認めるときは、強制執行の停止を命じることができると解されます(家事事件手続法157条1項)。

元妻は、元夫に対し、本件公正証書に基づく子らの養育費について、155万4000円の未払があるとして、代理人弁護士を通じて強制執行手続へと移行するとの通知をしているのであるから、元夫の急迫の危険を防止するため、本件公正証書第3条第1項に基づく強制執行を停止する必要性が認められるとしました。

 

請求異議訴訟との関係は?

なお、元夫が、強制執行を停止する方法としては、同債務名義に基づく強制執行の不許を求める請求異議訴訟を提起し、併せて強制執行の停止を申し立てることも考えられると指摘。

しかし、元夫は、子らの養育費減額の理由として、本件公正証書による合意の後に生じた事情の変更を主張しているところ、養育費の支払に関して合意が成立した後に、事情の変更が生じた場合には、当事者間の協議により合意内容を変更し、当事者間の協議が調わない場合には、家庭裁判所がこれを変更又は取り消すことができるのであって、事情の変更が生じたとしても、合意内容の変更の協議又は審判がされていない場合には、既に成立した合意内容が当然に変更されるものではないと指摘。

したがって、通常、事情の変更により養育費の減額を求める義務者は、家庭裁判所に調停又は審判を申し立てることになり、それによって協議ないし審判によって養育費の内容を新たに定めることが可能となるのであると言及。

この場合、義務者が請求異議訴訟によって従前の債務名義を争う方法も存在するが、養育費の額を争い、新たな養育費の内容を定めることを求める事案の解決としては、家庭裁判所の調停又は審判によるのが相当というべきであるとしました。

したがって、新たな養育費の内容を定める前提として、従前の債務名義に基づく強制執行の停止を求めるため、請求異議訴訟を提起しなければならないと解することは、義務者に不要な負担を強いるものであり、適当とは言い難く、端的に養育費の減額を求める調停又は審判に伴う保全処分として強制執行停止の申立てをするのが相当であるとしました。

 

養育費の減額は、請求異議訴訟の中で判断するより、調停や審判など家庭裁判所でするのが相当です。

そのため、強制執行を止める手続きも、訴訟よりも、家庭裁判所の手続に付随した保全処分でした方が良いという内容です。

 

養育費減額のロードマップ

公正証書や調停など債務名義で養育費を決めている場合、遅れると差し押さえを受けるリスクがあります。

養育費減額の理由がある場合には、減額請求通知を送り、減額調停や審判の申立をするほか、差し押さえを回避するのであれば、本件のように審判前保全処分も合わせて申立をしておいた方が良いということになります。

請求異議訴訟ではなく、家庭裁判所での手続きをするようにしましょう。

また、当然ながら、調停や審判で減額が認められなければ意味がないので、減額の理由をしっかり示せるように準備もするようにしておきましょう。

 

養育費の減額を求める人は手続選択の参考にしてみてください。

 

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